『不動産』駐車料金の滞納について自動車の競売が認められたケース

広島の弁護士、齋藤法律事務所です。

判決文によるとおよその事案は次の通り。

AさんはBさんと、Aさんの駐車場を利用させる契約を締結したましが、Bさんが駐車代金を支払わなかったので簡易裁判所に訴訟を提起しました。簡易裁判所は、Aさんの請求を全面的に認め、Bさんに駐車代金を支払えとの判決を下しました。
Bさんは車をAさんの駐車場に停めたままだったので、AさんはBさんの車を競売にかけることを裁判所に申し立てました。
1審2審はAさんの申し立てを退けました。
最高裁判所は、Aさんの申立てを認め、競売手続きの開始を認めました。

つまり、駐車料金を滞納しつつ、車を駐車しているような場合、車を売却して回収を図れる場合があるということですね。

法律的構成の概略をいうと、駐車料金支払い請求権は自動車に関して生じた債権だから、Aさんは占有するBさんの自動車について留置権を取得する。そして、留置権に基づいて形式的競売(民事執行法195条)にかけた後、その代金を留置する。AさんはBさんに代金を返還しなければなりませんが、駐車場料金請求権と代金返還請求権を相殺して、事実上支払いを受けたのと同じ結果になる。ということです。

この判例で法的に問題になったのは、次のとおり。
簡易裁判所でAさんが受けた判決はあくまで駐車料金の支払いについてだけでした。ところが、民事執行法181条1項1号には「担保権の存在を証する確定判決」が必要だと書かれていました。そうすると、支払い請求権について認めた判決があっても、「担保権の存在を証する確定判決」ではありませんから、競売開始の要件がないのではないか、ということでした。
 

最高裁判所は、「民事執行法181条1項1号所定の「担保権の存在を証する確定判決」としては、債権者による登録自動車の占有の事実が主要事実として確定判決中で認定されることが必要ではないと解すべきである。」と判示し、占有の事実は確定判決中で認定される必要がない旨示しました。

なかなか興味深い判例ですね。

以上、最高裁判所第2小法廷決定平成18年10月27日でした。

広島 齋藤法律事務所 弁護士齋藤有志

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